2022-05-06

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【調査レポート】インド高度人材採用企業に聞く!エンジニア採用の魅力とその効果

日本のさまざまな産業でデジタル化が進む現在。各産業の日本企業がAI、 ビッグデータ、IoTなどのテクノロジーを導入し、競争力の維持・強化を図る中、情報技術者の不足が大きな問題となっています。
経済産業省の予測では2030年、中位シナリオで情報技術者が45万人不足するとされ、テクノロジー企業の85%が将来の人材不足を懸念しているというデータもあります。
今後重要になってくるのが、専門的な技術力や知識を有する、外国籍の高度人材の採用。中でも、多数の多国籍企業でCEOや役員を輩出するインド高度人材に、世界から注目が集まっています。

インド高度人材採用は、どのように進めていけばいいのか?どんなメリットがあるのか。Tech japanでは、インド高度人材採用のケースストーリーとなること、日本の業界全体の関心拡大を目的として、経済産業省の事業の一環(※)でインド高度人材採用に先進的に取り組んできた企業10社へのインタビュー調査を実施。導入に成功した先進事例をご紹介します。

※経済産業省「令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(インドとのデジタル連携の強化に向けたパートナーシップ再構築調査)

 

インド高度人材採用、実際はどうなの?


今回の調査では、インド高度人材の活用において日本をリードする企業・スタート アップ計10社へアンケートと聞き取りを実施。CEO、技術責任者、人事責任者など企業側と、実際に活躍するインド高度人材にそれぞれお話を伺いました。
調査によると、採用の満足度は86%。そのうち14%は、期待以上の活躍をしてくれていると回答がありました。企業側はインド高度人材にどんな魅力を感じているのでしょうか。調査の結果、大きく以下のことがわかりました。

①特にエンジニアリング領域で優秀な人材が多く、成長志向やハングリー精神、交渉力などが日本の先進企業でも高く評価されている。

企業側に対する調査では、「エンジニア系で優秀な人が多い」「ハングリー精神」がインド高度人材採用の理由のトップ2となりました。他国の人材と比べると、マネジメントにおいても「自分の意見を積極的に述べてくれる」「失敗を恐れない挑戦マインドがある」という声がポジティブな要素としてあげられました。

例えば、富士フイルム株式会社で働くDeepak Keshwaniさんは、東京大学大学院を経てAIリサーチサイエンティストとして入社。X線、CT、MRIなどの医療画像から異常を認識するAI、アルゴリズムを開発していましたが、業務範囲を広げ、現在ではインドにある同社AI健診センターの技術開発業務のリーダーを務めています。AI健康診断の世界的な普及に積極的に取り組み、長期的には人々のライフスタイルの寄与するような技術も展開したいという意欲があります。企業側からは「スキルを磨きながら成長し、メディカルAI分野で高い成果を上げている」と評価されていました。

②中堅・シニア層のインド高度人材は、起業・社内起業の経験を有するケースがあり、特に日本企業がインドで開発拠点およびビジネス拠点を設立する際に重要な人的資源となる。

グローバル人材の採用に力を入れるにあたり、インドに開発拠点を開設する企業も増えています。そんな時、インド高度人材は大きな力となっているようです。

例えば楽天株式会社では、世界をマーケットとしなくては生き残れないと2010年から全社で英語を公用語化し、グローバル採用を本格的に開始。2015年にはインドに研究開発拠点を開設しました。現在、楽天インディアのCEOは、インド高度人材であるSunil Gopinathさんが勤めています。当初は100名程度だった組織が、2022年には約2000名に(買収企業の社員を除く)。Sunilさんはシリコンバレーの米国大手企業やインド企業で働いてきた経験を生かし、楽天インディアをさらなる成長へと牽引しています。
また、人工衛星データと地上データの解析、事業創出を行うサグリ株式会社では、2019年にインド法人を設立。日本人責任者1名、COOを務めるインド高度人材1名、インド人エンジニア数名でマイクロファイナンス支援事業、営農データ基盤事業を展開しています。COOを務めるChevdumoi Ravanth Mohanaramさんは、日本での勤務経験、事業立ち上げ経験を持ち、インド市場への知見も豊富だったそうです。

③インド高度人材は一般的に高いコミュニケーション能力と文化的適応力を持っており、日本企業における活躍ポテンシャルは高い。

技術力があっても、周囲とのコミュニケーションが取れなければ仕事を進めていくことは困難です。インド高度人材はそのコミュニケーション面で優れているとの回答が多くありました。異文化への柔軟性や、様々なバックグラウンドに配慮した説明や接し方から、マネジメントで活躍する人材もいます。

例えば株式会社メルカリで働くMohan Bhatkarさんは、顧客信頼性プラットフォーム技術責任者として活躍しています。企業側は「グローバルな職場に必要なシンプルかつ明示的なコミュニケーション法だけでなく、日本ならではの全てを言葉にしないコミュニケーションも深く理解している」と評価。Mohanさん自身も、「マネジメントをする上で日本特有の全てを言葉で表現し ない文化で働くことは良い経験になる」とポジティブに捉え、適応力を発揮して活躍しています。

④ コロナ禍において日本企業に採用されたインド高度人材が日本に渡航できない事例が生じているが、日印間の時差が3.5時間と比較的緩やかなため、インドからのリモートワークが容易に実現できている。

コロナ禍の現在も、調査に協力いただいた企業はインド高度人材の採用を中止せず、むしろ拡大しています。その背景として、たとえ日本に渡航できない状態になっても、他国に比べて比較的リモートワークが導入しやすいという回答がありました。世界の水問題の解決に向け節水関連製品の開発に取り組む株式会社 DG TAKANOは、2019年からインドでの採用活動を開始。インド工科大学(IIT)のインターンシッププラットフォームを使うなどして、IIT卒の人材を採用してきました。現在は渡航制限が出ているものの、7名のIIT卒高度人材がリモート勤務インターンとして活躍しています。渡航制限が解消され次第、日本の開発拠点での勤務を開始する予定だそうです。

 

インド人材から見た日本・日本企業の魅力と特徴

 

日本企業がインド高度人材の採用に魅力を感じている一方、彼ら・彼女から見た日本・日本企業はどのような印象なのでしょうか。10社で働く10名のインタビュー調査から、大きく以下のことがわかりました。

・技術(特にハードウェア)先進国としての日本のブランドは健在であり、日本で働くことで他の国には存在しない先進的な技術に触れる機会があると広く認識されている。

・西洋型の成果主義やトップダウン型経営と比較して、長期的な思考や従業員とコンセンサスを取りながら納得感のある意思決定を行う日本の経営哲学は、インド高度人材を惹きつけることがある。

・日本人の普遍的な高品質へのコミットメントおよび細部へのこだわりは、多くのインド高度人材が敬意を抱く要素である。 

・日本の安全さ、公共交通機関の利便性、「クリーン&グリーン」精神や親切さが、インド 高度人材に高い満足感をもたらす社会的要素である。

特に日本の技術力に関しては、幼少期から様々なコンテンツを通して「技術力の高い国」と認識されていることが明らかになりました。また、女性にとっては特に、暮らしていく上での日本の安全さも重要な要素になっています。
採用においてインターンシップを行なっている企業も多く、その中で企業の長期的なビジョンや技術へのこだわりを肌で感じ、入社を決めたという例もありました。
インタビューに協力いただいた方の75%が、現在の業務内容に満足していると回答しています。一方で、パフォーマンスに対する給与の満足度は満足しているが47%、改善の余地ありが53%という結果となりました。企業側では評価制度の再設計や、納得感のあるフィードバックに取り組んでいます。彼ら、彼女らの認識する良さを生かしながら、より納得して働ける環境を整備することが重要になりそうです。

 

加速化するインド高度人材採用

 

今回の調査では、協力いただいた10社全てが今後も採用を継続・強化する、継続する可能性があると回答しました。採用については、インドの大学へアプローチする新卒採用が多く、今後も増えていくと考えられます。一方で、これまで新卒採用のみ行なっていた企業も、今後中途、経験者採用を積極的に行いたいという回答もありました。

今後ますます、インド高度人材の採用は加速していく見込みです。採用は情報技術者不足を解消し、日本の産業の発展にも繋がっていくでしょう。

 

調査レポート資料詳細はこちら>>>
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220301001/20220301001-1.pdf